入  ?  垂  手                
 

   
 材質:クス  高:24cm
  2004.9.製作

老人はやせ衰えた胸をあらわにし、ぶらりと手をたれてとぼとぼと街に出かけます。馬面で自己を表に出さず風格もかくし、街では人々の中にいても何もしないが、人々を感化して成仏させます。衆生救済という人為・善意の先にあるもの、それは「
真っ直ぐな釣り針で魚を釣る」に等しい最高の教化の仕方であると云われています。
第十図の老人は市井の隠者であり、こんな姿を彫ってみたかったのです。

 

禅の語録に梁山廓庵和尚の「十牛図」があります。この中の第十図は「入鄽垂手(にってんすいしゅ)」と題されて老人が描かれています。これは禅の修行が完成した人の生き様を描いたもので、老人が瓢を提げて街へ出掛け、杖をついて隠れ家に帰る姿です。
」とは街のこと、「垂手」とは手をさしのべて衆生に尽くすこと、即ち煩雑な人間社会に入って人々を救う教え。